上伊那地域のお盆:伝統行事・風習・食文化の今と昔をたどる

お盆の精霊馬(なすときゅうり)

はじめに

長野県上伊那地域(伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕輪町、南箕輪村、中川村、宮田村、飯島町など)は、古くからの習俗が色濃く残る地域であり、特にお盆の時期には独自の風習や食文化が息づいています。全国的に見られる「迎え火」「送り火」「盆棚(精霊棚)」といった一般的な風習のほか、上伊那ならではの「振りまんど」や「百八灯」、「おさんやり」など、地域性豊かな行事が今なお受け継がれています。また、食文化においても「天ぷらまんじゅう」や「お煮かけそうめん」など、特有の風習が根付いています。

本記事では、上伊那全域におけるお盆の行事、食文化、風習を詳しく紹介するとともに、過去と現在の違いについても掘り下げていきます。

1. 上伊那地域に伝わる伝統的なお盆行事

1-1 振りまんど(伊那市・南箕輪村など)

「まんど」とは、藁を束ねて作ったたいまつのようなもので、迎え火・送り火の際に火をつけて振り回す「振りまんど」は、伊那谷特有の風習です。子どもたちが地域の指導者と共に手作りし、夜空に炎の軌跡を描きながら先祖を迎え、送り出します。

参考:

1-2 百八灯(伊那市西箕輪)

8月16日に行われる「百八灯」は、煩悩の数である108個の火を灯して先祖を送る送り盆行事。広場に吊された火玉に一斉に点火し、幻想的な光景が広がります。地域の中学生が火付け役を務め、共同体の一体感を感じさせます。

参考:

1-3 おさんやり(箕輪町南小河内)

南小河内地区に伝わる厄払い行事「おさんやり」は、重さ400kgにもなる藁舟を担ぎ、地区内を練り歩く勇壮な行事。疫病退散の祈願が込められており、舟は最後に真っ二つに壊して、その破片をお守りとして持ち帰ります。

参考:

2. 上伊那地域のお盆の食文化

2-1 天ぷら・天ぷらまんじゅう

お盆の定番料理である天ぷらは、ナスやカボチャなど季節の野菜を揚げて先祖に供え、家族でいただきます。特に上伊那や中南信地域では「天ぷらまんじゅう」が特徴的で、餡入り饅頭を天ぷらにして供える習慣があります。

お盆の天ぷら饅頭

2-2 お煮かけそうめん

「お煮かけ」は、温かい汁をかけて食べる伊那地方独特の麺料理で、お盆にはそうめんや冷や麦を使って供えます。干し椎茸や野菜の出汁が効いた優しい味が特徴で、郷土の味として今も多くの家庭に残っています。

上伊那のお盆(お煮かけそうめん)

2-3 おやき(ナス)

お盆の供物として欠かせない「おやき」。中でもナスのおやきは精進料理として親しまれており、家庭で手作りされることが多いです。8月14日は「お盆おやきの日」としても制定されています。

上伊那のお盆のおやき

3. 昔と今のお盆の違い(比較表)

項目昔の上伊那のお盆現在の上伊那のお盆
迎え火・送り火ほとんどの家庭で藁や白樺の樹皮を焚いた住宅事情により提灯で代用する家庭も
地域行事住民総出で行事に参加担い手不足・縮小傾向も、伝承努力あり
親戚の集まり本家に大集合・新盆見舞いも活発帰省者減少・日数短縮の傾向あり
供物・料理自家製野菜と手作り中心市販品や総菜利用も増えるが味は継承

おわりに

上伊那地域のお盆は、先祖を敬い、地域のつながりを大切にする文化が色濃く残る行事です。変化する現代社会の中でも、こうした伝統は地域アイデンティティを支える重要な要素です。これからも次世代に向けて、この豊かな文化を丁寧に伝えていくことが求められています。

この記事の著者

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一般社団法人あいえん
長野県上伊那郡を中心に、終活・身元保証・葬送支援を行っています。
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