上伊那のお盆の風習と食文化|振りまんど・百八灯・おさんやり・天ぷらまんじゅうを紹介

長野県上伊那地域には、今も地域ごとに特色あるお盆の風習が残されています。

伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕輪町、南箕輪村、中川村、宮田村、飯島町などからなる上伊那地域では、全国的に見られる迎え火・送り火・盆棚といった風習に加え、「振りまんど」「百八灯」「おさんやり」など、伊那谷らしい伝統行事が受け継がれてきました。

また、お盆の食文化にも特徴があります。天ぷら、天ぷらまんじゅう、お煮かけそうめん、夏野菜を使った料理などは、先祖を迎えるための供物であると同時に、家族や親戚が集まる時期のごちそうでもありました。

この記事では、上伊那地域に伝わるお盆の行事、食べ物、昔と今の違いをわかりやすく紹介します。


上伊那地域のお盆とは

お盆は、ご先祖様の霊を家に迎え、供養し、再び送り出す日本の大切な行事です。

一般的には、8月13日に迎え火を焚いてご先祖様を迎え、14日・15日に供養を行い、16日に送り火で送り出す地域が多く見られます。

上伊那地域でも、各家庭で盆棚を整えたり、仏壇に供物を供えたり、お墓参りをしたりする風習が続いています。

ただし、上伊那のお盆は家庭内の行事だけではありません。地域の子どもや住民が参加する伝統行事も多く、火を使った迎え盆・送り盆の行事が今も残っている地域があります。

上伊那のお盆は、先祖供養と地域行事が重なり合った、地域色の濃い文化といえます。


上伊那のお盆に見られる主な風習

お盆の精霊馬(なすときゅうり)

迎え火・送り火

お盆の代表的な風習が、迎え火と送り火です。

迎え火は、ご先祖様が迷わず家に帰ってこられるように焚く火です。送り火は、お盆を終えたご先祖様をあの世へ送り出す火とされています。

昔は、家の前や庭先で藁、松、白樺の皮などを焚く家庭もありました。現在では、住宅事情や火災予防の観点から、実際に火を焚かず、盆提灯や電灯で代用する家庭も増えています。

それでも、「火を灯して先祖を迎え、送り出す」という考え方は、上伊那のお盆文化の中に今も残っています。

盆棚・精霊棚

お盆には、仏壇の前や座敷に盆棚を設け、位牌、花、線香、果物、野菜、故人の好きだったものなどを供える家庭があります。

ナスやキュウリで作る精霊馬を飾る地域もあります。キュウリの馬は「早く帰ってきてもらうため」、ナスの牛は「ゆっくり帰ってもらうため」といわれます。

最近では、昔ながらの大きな盆棚を作る家庭は少なくなっていますが、仏壇に花や果物、故人の好きだった食べ物を供える形で、お盆の心は受け継がれています。

新盆・初盆

亡くなってから初めて迎えるお盆を、新盆または初盆と呼びます。

上伊那地域でも、新盆は特に大切にされてきました。親戚や近所の人が訪問し、線香をあげたり、供物を持参したりすることがあります。

近年は、親戚づきあいの変化や高齢化、遠方に住む家族の増加により、昔ほど大勢が集まる形は少なくなっています。それでも、新盆を丁寧に行いたいという気持ちは、今も多くの家庭に残っています。


上伊那に伝わる代表的なお盆行事

振りまんど・振り万灯

上伊那のお盆行事としてよく知られているのが、「振りまんど」または「振り万灯」です。

「まんど」とは、藁などを束ねて作るたいまつのようなものです。火をつけたまんどを子どもたちが回しながら歩くことで、ご先祖様を迎えたり送ったりします。

南箕輪村や伊那市周辺などで伝えられており、8月13日の迎え盆、8月16日の送り盆に行われる地域があります。

夜空に火の輪が浮かび上がる様子は、非常に幻想的です。一方で、火を扱う行事であるため、地域の大人が見守り、子どもたちに振り方や安全面を教えながら行われます。

振りまんどは、単なる行事ではなく、子どもたちが地域の伝統を体験しながら学ぶ機会にもなっています。

百八灯

伊那市西箕輪大萱などに伝わる「百八灯」も、上伊那のお盆を象徴する送り盆行事の一つです。

百八灯では、煩悩の数とされる108にちなんだ火を灯し、ご先祖様を送ります。暗くなった会場に多くの灯りがともる光景は、地域のお盆行事ならではの厳かさと美しさがあります。

地域によっては、子どもたちや中学生が準備や点火に関わることもあり、世代を超えて受け継がれる行事となっています。

百八灯は、先祖供養の意味だけでなく、地域の人が同じ場所に集まり、同じ時間を共有する大切な機会でもあります。

おさんやり

箕輪町南小河内地区に伝わる「おさんやり」は、お盆に行われる厄払いの行事です。

藁で作られた大きな舟を担ぎ、地区内を練り歩く勇壮な行事として知られています。疫病退散や厄除けの願いが込められており、最後には舟を壊し、その一部をお守りとして持ち帰る風習もあります。

おさんやりは、上伊那の中でも特に地域性の強い行事です。先祖供養のお盆と、地域の安全や無病息災を願う厄払いが結びついた、貴重な民俗行事といえます。


上伊那のお盆に食べられるもの

天ぷら

長野県のお盆料理として、天ぷらは欠かせない存在です。

ナス、カボチャ、インゲン、ピーマン、シソなど、夏野菜を使った天ぷらを作り、仏壇に供えたり、家族で食べたりします。

上伊那地域でも、お盆になると家で天ぷらを揚げる家庭が多くありました。自家製の野菜を使った天ぷらは、先祖への供え物であると同時に、帰省した家族や親戚を迎えるごちそうでもありました。

現在は、家庭で揚げるだけでなく、スーパーや惣菜店で購入する家庭も増えています。それでも「お盆には天ぷら」という感覚は、今も地域に残っています。

天ぷらまんじゅう

上伊那を含む信州の一部地域で、お盆の食べ物として親しまれているのが「天ぷらまんじゅう」です。

餡入りのまんじゅうに衣をつけて揚げたもので、外はサクッと、中はふっくら甘い味わいになります。

初めて聞く人には驚かれることもありますが、地域によってはお盆の定番として仏壇に供えたり、家族で食べたりしてきました。

天ぷらまんじゅうは、単なる珍しい郷土料理ではありません。甘いものが貴重だった時代には、ご先祖様や家族のための特別なごちそうでもありました。

お盆の天ぷら饅頭

お煮かけそうめん

上伊那地域のお盆料理として、ぜひ紹介したいのが「お煮かけそうめん」です。

お煮かけそうめんは、そうめんやひやむぎに、野菜や油揚げ、干ししいたけなどを煮た温かい汁をかけて食べる郷土料理です。

暑い時期に食べるそうめんでありながら、冷たい麺料理ではなく、温かい汁をかけるところに特徴があります。

お盆には、仏壇に供えたり、来客にふるまったりする家庭もありました。やさしい味わいで、子どもから高齢者まで食べやすい料理です。

今では作る家庭が少なくなっているかもしれませんが、上伊那のお盆の味として、次世代に伝えていきたい料理の一つです。

上伊那のお盆(お煮かけそうめん)

おやき・夏野菜の料理

長野県のお盆といえば、おやきを思い浮かべる人も多いでしょう。

特にナスを使ったおやきは、夏野菜の収穫時期とも重なり、お盆の供物や家族の食事として親しまれてきました。

ただし、おやきの食文化は長野県内でも地域差があります。北信地域で特に強く見られる風習もありますが、上伊那でも家庭によってはナスのおやきや野菜を使った粉もの料理を作ることがあります。

お盆の料理は、地域名だけで一律に決まるものではなく、家庭ごとの記憶や味として残っている点も大きな特徴です。

上伊那のお盆のおやき

昔と今の上伊那のお盆の違い

昔の上伊那のお盆は、家族や親戚、近所とのつながりが今よりも濃い行事でした。

本家に親戚が集まり、仏壇に手を合わせ、盆棚を整え、たくさんの料理を用意する。新盆の家には多くの人が訪問し、地域全体で先祖を供養する雰囲気がありました。

一方、現在のお盆は少しずつ形が変わっています。

遠方に住む家族が増え、帰省の日数が短くなったり、親戚が一堂に集まる機会が少なくなったりしています。高齢世帯や一人暮らしの方が増えたことで、昔のように大がかりな準備をすることが難しい家庭もあります。

また、住宅事情や安全面から、迎え火・送り火を実際に焚くことが難しい場合もあります。盆棚を簡略化したり、料理を手作りではなく購入したりする家庭も増えています。

しかし、形が変わっても、お盆の本質は大きく変わっていません。

故人を思い出すこと。
家族で手を合わせること。
お墓をきれいにすること。
先祖や家族のつながりを感じること。

これらは、今の上伊那のお盆にも受け継がれています。


項目昔の上伊那のお盆現在の上伊那のお盆
迎え火・送り火ほとんどの家庭で藁や白樺の樹皮を焚いた住宅事情により提灯で代用する家庭も
地域行事住民総出で行事に参加担い手不足・縮小傾向も、伝承努力あり
親戚の集まり本家に大集合・新盆見舞いも活発帰省者減少・日数短縮の傾向あり
供物・料理自家製野菜と手作り中心市販品や総菜利用も増えるが味は継承

上伊那のお盆で大切にしたいこと

お盆は、単に昔の風習を守るだけの行事ではありません。

家族で故人の話をする。
子どもに地域の行事を見せる。
お墓参りの意味を伝える。
仏壇に故人の好きだったものを供える。
普段会えない親戚と連絡を取る。

こうした小さな行動も、お盆の大切な過ごし方です。

特に上伊那地域には、振りまんど、百八灯、おさんやり、お煮かけそうめん、天ぷらまんじゅうなど、地域ならではの文化があります。

これらは観光行事として見るだけでなく、地域の暮らしの中で受け継がれてきたものです。

「昔はこうだった」と懐かしむだけでなく、「今の暮らしの中でどう残していくか」を考えることが、これからのお盆には大切です。


お盆は終活を考えるきっかけにもなる

お盆は、ご先祖様や亡くなった家族を思い出す時期です。

そのため、自分自身や家族のこれからについて考えるきっかけにもなります。

たとえば、次のようなことを家族で話しておくと安心です。

・お墓を今後どう守っていくか
・仏壇や位牌を誰が管理するか
・親が入院したとき、誰が手続きをするか
・一人暮らしになったとき、緊急時の連絡先をどうするか
・葬儀や納骨について希望があるか
・遺言や死後の手続きについて考えているか

お盆にこうした話をするのは、少し重く感じるかもしれません。

しかし、家族が集まる時期だからこそ、普段は話しにくいことを自然に話せる場合もあります。

「まだ早い」と思っていても、準備をしておくことで、本人も家族も安心できます。


まとめ|上伊那のお盆は、地域の記憶をつなぐ大切な行事

上伊那地域のお盆には、先祖を敬い、家族や地域のつながりを大切にする文化が色濃く残っています。

振りまんど、百八灯、おさんやりといった伝統行事は、地域の人々が長い時間をかけて守ってきた大切な文化です。

また、天ぷら、天ぷらまんじゅう、お煮かけそうめん、夏野菜を使った料理など、お盆の食文化にも、上伊那らしい暮らしの知恵と温かさがあります。

現代では、家族の形や暮らし方が変わり、お盆の過ごし方も少しずつ変化しています。

それでも、お盆に手を合わせ、故人を思い出し、家族のこれからを考える時間は、今も変わらず大切です。

上伊那に残るお盆の風習を、無理のない形で次の世代へ伝えていくことが、地域の記憶を守ることにつながるのではないでしょうか。


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この記事の著者

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一般社団法人あいえん
長野県上伊那郡を中心に、終活・身元保証・葬送支援を行っています。
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